泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】




「ごめんね、君とは友達になれない」


海風が頬を撫でる。

僅かに目を大きくさせた後、きゅっと唇を結んだ彼に心がズキンとした。


「ん、分かった」

「⋯」

「いきなりごめんね」

「⋯」


私から目を逸らした彼の、傷付いた顔に何をどうするのが正解なのか分からない。

例え後悔しない様にと思っていても、知らない女に声を描けるなんてきっと勇気は必要だったはず。勇気を出して声を掛けてくれたはずの彼をこんな悲しい顔にさせてしまった事、傷付けてしまった事がとても申し訳なくて。

だけど私にはそう言うしか出来ないから。


「友達にはなれない」って言う事しか分からない。


彼の顔も、声も、名前も。

全てを来週には忘れてしまう私はどうやったって彼とは友達になんてなれなくて。

一目惚れの愛の大きさなんて私には分からないけれど、たった一瞬でも、気の迷いだとしても私を好きだと言ってくれた彼の為を思うなら拒絶をするしかない。


「⋯あの、さ」


だけど、夢だったんだ。

友達を作ることも、誰かと恋をすることも。

憧れて、私には出きっこないって諦めて、だけどずっとずっと、密かに夢見てた。


「もし、君が私と本当に友達になりたいと思ってるならまた来週、ここに来て」


せっかく、私の周りに張り巡らされている膜を破ろうとしてくれた彼を諦めたくなかった。