泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


「いきなりこんな事言われても迷惑だって事は分かってる」

「⋯」

「でも、やらない後悔よりやる後悔って言うじゃん」

「⋯」

「この場合はやるじゃなくて言う、だけど伝えておきたかったから」

「⋯」

「まずは友達から⋯ってのは、どう?」

「っあはは、君、面白いね?」


飄々としているのに嫌味をかんじないその態度。澄ました感じに見えるのに喋り方も声色も、全てが優しくて私はつい、笑ってしまった。


「面白い?」

「うん。だって普通、一言も喋った事のない人に好きだなんて言わないと思うよ」

「俺は言うよ」

「うん。だろうね」


彼どこかポカポカした空気を持っている。
頭上ではジリジリと太陽が輝いていて、夏間近の今は夕方でも暑いくらいで。

だけど彼は灼熱の太陽というより、木漏れ日の様な人だと直感的に思った。


「木漏れ日、だね」

「え?」

「ううん。なんでもないよ」


初対面の人にこんな事を思うなんてどうかしている。だけど久しぶりに家族以外の人とこんな風に笑って話をした事がとても楽しくて。


「俺坂口拓海(さかぐちたくみ)っていうから」

「⋯拓海、くん」

「友達になってくれる⋯?」


もしも私がずっと今日の事を、気恥しそうに、だけど真っ直ぐに私を捉えるその瞳をずっとずっと覚えていられたら⋯⋯、

きっと喜んで頷いていただろう。