泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】



「───え?」

「え?じゃなくて」

「え?」

好き⋯?付き合って⋯?意味がわからず目をキョトンとさせる。

「あの、人違いではありませんか?」

一つ分かるのは彼は人違いか何かをしていのではないかという事。

「人違いじゃない」

「⋯」

「ずっと、アンタを見てた」

だけどどうやら私の言葉は見当違いだった様で、真っ直ぐ私を見つめるその瞳に何故か目を逸らせなくなった。

「いつもここで海を見てるよね?」

「⋯」

「そんなアンタを俺もいつも見てて⋯。あ、ストーカーじゃないから。それだけは、本当」

「⋯」

「⋯一目惚れって言ったら信じてくれんの?」

一人で話を進めていく彼にクエスチョンマークがまだ頭の中に浮かんでいるけれど、なんとなく、ただ本当になんとなく彼の話を聞きたいと思った。

きっとこれが非日常だったから。

私の周りの薄い膜を彼が破りかけていたから、私はしてはいけない期待をしてしまったんだ。

「とりあえず、さ」

「うん?」

「ここ、座れば?」

そう言って指さしたのは私の隣。

その言葉に頷いて腰を下ろした彼の顔から影が消えて、やっと私はその素顔を見る事が出来た。


目鼻立ちの整った麗しい美青年のような顔立ちをした彼。
その雰囲気は漫画の主人公というよりかは絵画から出てきた様な雰囲気で。
だけど美しい彼のサラサラの黒髪と同じ黒色の瞳は海の輝きをそのまま瞳に閉じ込めた様にキラキラしていて。それが若干、大人っぽい顔立ちに幼さを宿していた。