泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】



そんな毎日を繰り返し、段々と夏が近付いていたある日の放課後、私はいつもの様に防波堤の上に座って海を見ていた。


「─────なあ、」


そんな私の後ろから聞こえた声は、到底女の子だとは思えなかったけれど低すぎる訳でもない、なんだか心地の良い音程で。

ゆっくりと振り向けば、そこには背の高い男の人が立っていた。

だけど座っている私を見下ろす様に立っているこの人の顔は逆光になってしまっていてよく見えない。

「⋯私、ですか?」

知り合いだとしても覚えていないんだけど、そんな私がわざわざ知り合いという存在を作るとも思えなくて訝しげに眉を寄せる。

「うん。⋯そう、君」

「⋯知り合いの方?」

「そういうわけじゃないけど」

戸惑う私と飄々とした態度の彼。知り合いじゃないなら一体なんだって言うんだろう?

黙ったまま彼を見上げる私。


ザザン、と波音が鼓膜を揺らす。



「好きなんだけど、付き合ってくんない?」



夏はもうすぐそこまで迫っていた。