泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】



何度も歩いた家の中、リビングのドアを開ければ何だかいい香りがして。


「佳乃、おはよう」

キッチンにいたお母さんとダイニングテーブルでテレビを観ていたお父さんが優しく微笑んだ。

「おはよう、お父さん、お母さん」

それに私はちゃんと覚えているよという事をアピールする様に大きく頷いた後、お父さんの斜め向かいに腰を下ろした。その隣には、中学生くらいの女の子。

状況からしてこの子が私の妹の彩乃だろう。

「⋯おは、よう。彩乃」

だから勇気を持ってそう声を掛けたのに、彩乃はそれに何かを返す事なくテレビから視線を逸らさない。

「⋯おはよう、彩乃、ちゃん⋯」

もしかして私は呼び捨てで呼んでいなかったのだろうかとそう言い直しても彩乃は視線を私の方に向ける事はせず、頑なに反応を示してくれないその態度に助けを求めるようにオロオロと視線をすぐ近くにいたお父さんへと向けた。

「彩乃は少し、機嫌が悪いみたいだな」

困った様に眉を下げるお父さんは乾いた笑い声を出した後「まあ、気にするな」と口パクで私に伝えた。


この一連の流れで私はやっと気付く。

私は妹に嫌われているのだと。

一週間で忘れてしまうような姉に妹は嫌気がさしているのだと。


「機嫌が悪いんじゃないし。私はただこの人が好きじゃないだけ」

「っこら、彩乃!」

「何?私が悪いわけ?」

「誰が悪いとかじゃないだろう」


ハッキリと言葉にされてしまえば、それはかなり、傷付くもので。

だけど彩乃の言う通り、悪いのは私だ。

お父さんは誰が悪いとかではないと言ってくれているけれど、間違いなく家族を壊しているのは私。

私が普通の人間なら、皆もっと幸せだったはず。