泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


この日記帳というのは私が時折書き綴っているもので、前は毎日書いていたけれど書いているうちに私はこの出来事をすぐに忘れてしまうんだとネガティブになってしまうから今ではたまに書く程度に留めている。

今では書く内容は主治医の先生やお母さんから言われた事等、ほとんど私の記憶に関しての事ばかり。

それを一週間に一度読んでは自分の症状を理解する様にしている。

だから毎日海を眺めている事や、覚えていられる事、いられない事の線引きを自分で知る事が出来るんだ。

スッキリとした勉強机の真ん中に出しっぱなしにしている日記。

日記帳の表示部分には「必ず読むこと」と書いてリセットされた朝に読める様にしている。


こういう事をいつまで続ければいいのだろう。

いつか私は普通の人になれるのだろうか。

いつかこの日記帳がなくても、覚えていられる様になるのだろうか。

毎日不安になっては悲しくて怖くてどうしようもなくなる。


どうしたら記憶をなくさずにいられるのだろう。その方法はいつかは存在してくれるのだろうか。


閉じた日記帳の表紙にはいつ出来たのかわからない涙の後が数粒、うっすらと残っていた。