「馬鹿だな、佳乃」
「っ」
「弱くても情けなくてもカッコ悪くてもいいのに」
「⋯っ」
「どんな佳乃でもいいから、悲しい時は傍にいたいんだよ」
「ふっ、」
「縋ってよ、頼ってよ。俺も悲しい時は佳乃に頼るから」
あやす様に泣く私の頭をポンポンと軽く叩く拓海に暫く涙を止める事が出来なかった。
弱さを見せられる人は数少ない。
だけどきっと、ゼロじゃないはずだ。
家族だって友達だって恋人だっていい。
きっと、自分が悲しんでいる時に傍にいてくれる人はいる。
「助けて」って、「悲しい」って手を伸ばせば、その手を掴んでくれる人はきっとこの世界のどこかにいるはずだ。
暫くしてやっと涙も引っ込み拓海から離れる。
名残惜しかったけど、拓海の顔を見たかったから。
「⋯なんであの日、待っててくれたの?」
「ん?」
「会えないって連絡したのに⋯」
「⋯ああ、それは、」
「それは?」
「普段会えない時は前の日に佳乃は言ってくれるから。前の日普通に「また明日」って言って分かれたのに急にあんな連絡入ってたからちょっとおかしいなって思って」
「⋯それだけ?」
「うん、それだけ」
それが勘というものなのかは分からないけど、そんな些細な事から拓海は私の変化に気付いてくれる。
「─────拓海」
誕生日は好きじゃなかった。
増えていく忘れ去った毎日を突きつけられているみたいで、遣る瀬なくなるから。
だけど今、それが変わるんじゃないかって予感がしている。
「金曜日、誕生日だったの」
「っえ、金曜?」
「うん。だから、“おめでとう”って言って欲しい」
「⋯」
そう言った私に拓海は少しの間固まった後、「ちょっとここで待ってて!」と言うが早いか駆け出した。
「っえ、拓海!?」
「すぐ戻るから!」
勇気を出してお願いしたのに⋯と思いながら予想のつかない拓海の行動に唖然としてその背中を見送った。



