泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


翌日の誕生日パーティーはお母さんが朝から唐揚げやケーキ作りをしてくれて、お父さんは冬用の可愛いブーツをプレゼントしてくれて、お昼には彩乃が私だけの演奏会を開いてくれた。


「彩乃は凄いね、私絶対楽器弾けないよ」

「お姉ちゃんは不器用だからね」

「彩乃の音を聴いてると楽しくなってくる」

「⋯私ね、高校でも吹奏楽続けようかなって思ってるんだ」

「わっ、そうなの?」

「うん。せっかく始めたんだし、中学の三年だけじゃ物足りなさもあるし」

「これからもどんどん上達してくのかぁ。楽しみだなぁ」

「高校でも頑張るから、また聴きに来てね」

「⋯っいいの?」

「お姉ちゃんの為に始めたんだから、お姉ちゃんが聴いてくれないと意味無いじゃん」


恥ずかしそうに自分のフルートを抱えながらそう言った彩乃にとても嬉しくなった。

嬉しいという言葉じゃ足りないくらいに、彩乃が愛しくて思わず抱きつけば「そういうのはいいから!」と剥がされた私を見てお父さんは安心した様に私たちを見て笑った。


夜にはお母さんお手製の唐揚げをメインにご馳走が並び、ケーキも食べて幸せな一日を過ごした。

とても、とても幸せだった。

お母さんの料理をお腹いっぱい食べて彩乃と笑いながら話して、お父さんも笑ってて。

これ以上ないくらいに幸せなのに、拓海の泣きそうな顔が頭から離れてくれる事はなかった。