泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】



日が傾き薄黄色に染まる空の下を歩く。

視界に映るのは自分の靴先だけ。

一つ、また一つ足を進める私の足取りは重く頼りなかった。

そうしていつもより時間を掛けて足を進めた私はいつの間にか海沿いの道路まで来ていた様で、ふと防波堤の方に目を向ければ⋯⋯、


「どうして⋯」


そこには緩く胡座をかく様にして座る拓海の姿があった。


⋯⋯どうして拓海がいるのだろう。

もしかして連絡を送り損ねていたのだろうか、そうしたらずっと待たせていた事になる。と慌ててトークアプリを確認してみたけれどそこにはきちんと送信されたメッセージがあった。

なら、余計に訳が分からない。

もちろん私と会わなくても拓海が防波堤にいる事は何もおかしくはないけれど、直感だろうか。その後ろ姿は、誰かを⋯私を、待っている様に見えた。



「⋯⋯拓海、」

防波堤の上、ゆっくりと拓海に近付き声を掛ける。

振り返った拓海は随分な時間待っていたはずなのに、そんな素振りを見せずに微笑む。


「佳乃」

「⋯連絡、見なかった?」

「何かあった?」

「っ」


微笑んだまま私の質問には答えずにそう口にする拓海はゆっくりと立ち上がって私を見下げる。

その瞳は優しいのに、逸らす事を許してはくれなくて。そっと伸びてきた指先が私の目尻を撫でた。


「⋯何か、あった?」


そしてもう一度そう言った拓海にドクドクと心音が大きさを増していく。


「何かって、なに⋯?」

「⋯」

「何でそんな事言うの⋯?」


優しく撫でられた目尻に、力が抜けてしまいそうになる。

我慢していた涙が零れてしまいそうだった。