泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】



「拓海は私のどこが好きなの?」

「ぶっ、」

「きたなーい!」

「佳乃が突拍子もない事言うからだろ」


ある夕方、防波堤に座りながらふと気になった事を聞いた私に激しく噎せる拓海は「コーヒー器官に入ったじゃん」とげっそりしている。

近くのコンビニで買ったホットコーヒーの缶を地面に置いて、トントンと胸を叩くその姿に悪い事をしてしまったな⋯と思いつつも「どこが好きなの?」と再び聞いた私に拓海はキュッと眉根を寄せた。


「何その質問」

「いや?ちょっと気になって」

「そういうのは聞いた方から言うべきじゃない?」


拓海の声はほんの少しだけ不機嫌が聞いて取れて、私は何かいけない事でも言ってしまったのだろうかと不安になる。


「なんか怒ってる?」

「怒ってないけど」

「けど?」

「さっきの佳乃の言い方だと、何も分かってないみたいだったから」

「どういう意味?」

「どうして拓海は私のことが好きなんだろ?って感じだった」

「⋯うん?」

「どこが、っていうよりもなんで、って聞き方だった」

「⋯」


そんなつもりはなかったと言えば嘘になる。


「鋭いなぁ、拓海は」

「佳乃のことが好きだから分かんの」

「⋯⋯じゃあ私のことが好きな拓海は、どうして私のことが好きなの?」


やんわりと誤魔化した言い方が通用しないなら直球で聞くしかない。

太ももの上に置いてあった自分の両手の指先を無意識に絡めて握ったのは、少しだけ怖かったからだ。