泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


カラン、と下駄を鳴らしながら屋台が並ぶ道を歩く。
地元の夏祭りとはいえ、もう少ししたら花火大会も始まる為お祭りには毎年結構な人数が集まっている。

すれ違うのも肩が当たってしまうくらいの人並みの中を、拓海と手を繋ぎながら歩く。
これなら迷子にはならないだろうって、色気のない事を考えながらも繋いだ右手にはずっと意識が向いていて、熱を持った私の手のひらは汗びっちょりじゃないだろうか?と心配になったり。


「何か食べる?」

「かき氷食べたい!後わたあめとたこ焼きとりんご飴も!射的もしたい!」

「本格的に楽しむつもりじゃん」

「当たり前だよ、せっかくのお祭りだもん」

「じゃあ一個ずつ回ろっか?」


右手に意識が行きつつも、そればっかりに気を取られてはいられない。

だってせっかく拓海とお祭りに来ているんだから。


びっしりと並ぶ出店にではなく、それを見て目を輝かせる私を見て楽しそうに笑う拓海は「まずはかき氷から行くぞー」と少し先にある大きく「かき氷」と書かれた出店を見つけてそこに向かった。


私がイチゴ味で拓海がブルーハワイ味のかき氷を食べて、舌が真っ青だよって笑ったり。

大きくて真っ白なわたあめを齧る私をみて「幼稚園児みたい」って笑う拓海に軽くグーパンをかましてあげたり。

たこ焼きと焼きぞはを一つずつ買って二人で半分こして食べたり。

りんご飴はお家で食べる様に買ったり。

かき氷を食べている姿を写真に撮られたり撮ったりたり。


常に笑っていたんじゃないかってくらい楽しい時間だった。

そして一通り屋台を見て回った頃に始まった打ち上げ花火。

ドドンッという轟音に、皆が立ち止まり夜空を見上げる。