「ねぇ、拓海」
「ん?」
「好きだよ」
「⋯佳乃?」
「凄く、好きだよ」
何も素直になるのは仲直りしたい時や相手と分かり合いたい時だけじゃなくてもいい。
ずっと残しておきたい事を言葉にするのもアリだ。
溢れ出す感情を言葉にする事はとても美しい行為だと思った。
「なに、いきなり⋯」
「言いたくなって」
「好きだって?」
「うん。大好きだって」
照れた様に「ありがと」とはにかむ拓海に何度だってそう伝えたいと思った。
この先も何度も、何度でも。
「記憶がなくなってもさ、私は何度だって拓海に恋をすると思う」
「⋯どうして?」
「理由は分かんないけど、きっと頭じゃなくて心が好きだって叫んでるからじゃない?」
「明日も来週も、この先も?」
その質問はとても切なくて。
とても難しくて。
だけど私は自信を持って頷く事ができる。
私は明日も来週もこの先も拓海を好きだと想うだろう。
「拓海も言ってよ」
「は?恥ずかしいじゃん」
「でも言われたい」
「欲張りじゃない?佳乃」
「全然欲張りなんかじゃないし」
いじける様にそっぽを向く私に拓海は「ガキ」とわざとらしく意地悪な顔を見せる。
それに私は「ガキじゃないし」と言い返して、最終的にはどちらも子どもっぽい事に二人で気付いて笑いあった。