泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】



「佳乃、少しいい?」


夜、寝る前に空に光る星を眺めているとコンコンと部屋のドアをノックする音が聞こえて、ゆっくり開いたドアから顔を覗かせたのはお母さんだった。


「お母さん、どうしたの?」

「少し話が出来ればと思って。入っていい?」


こうして部屋までお母さんがやって来るのは珍しく、私は「どうぞ」と言って自分が座っていたベッドの横を叩いた。


「明日、佳乃も行くでしょ?」


座るや否やそう切り出したお母さんに私は気まずさを感じて視線を下げる。


「彩乃の中学最後のコンクール、佳乃も一緒に観に行こうよ」

「⋯⋯でも、」

「彩乃だって本当は来て欲しいの」

「⋯」

「彩乃が頑張った集大成、見届けてあげよう」


そう言って微笑むお母さんに本当に私が明日コンクールに行ってもいいのか悩む。

お母さんは彩乃も来て欲しいと思ってるなんて言っているけれど私には到底そうは思えなかったから。


「佳乃だって応援したいでしょ?」

「それは⋯したい、けど」

「なら行きましょう」

「でもっ、」

「でももだってもない。明日は私とお父さんと佳乃で彩乃の応援に行くの」

「決定事項なの?」

「そうよ」


有無を言わさず「明日は8時半には家を出るからね」と言い残し部屋を後にするお母さんに私は諦めるしかなかった。

拒絶されるのが怖い。

だけど向き合うなら明日しかないと思った。

ごめんねもありがとうも、私の気持ちも全部全部話して、それで彩乃の気持ちも受け止めよう。

例え彩乃に嫌われてしまっても、向き合う事が大切なはずだから。


明日、彩乃のコンクールが終わったら、私は彩乃と向き合おうと決めた。