葦名絢芽は、初恋を諦めたい

海外に行く前までは、よく笑顔を見せてくれたけど、四年の年月は人を変えてしまったようだ。

無表情な顔は、端麗な容姿も相まって少し怖いと思ってしまう。

昔みたいに仲良くしてくれないかもしれない。

私の心に暗雲がたちこめていった。

……でも、その方が都合がいいかも。

私の気持ちを隠し通せるだろうから。

そう言い聞かせてみても、不安が和らぐことはなかった。



「顔面偏差値えぐかった」
「ガチでツートップ並」
「もはや、御三家」

校内はお祭り騒ぎとなっていた。

クラス内も伊織くんの話で盛り上がっている。

亜実ちゃんもつばきちゃんも例に漏れず、いつもよりテンションが高かった。

いつも落ち着いている亜実ちゃんが饒舌になっているの、すごくレアだ。

雑誌やSNSに載っている格好いいアイドルや俳優を見てもこうはならない。

改めて伊織くんの凄さに驚かされた瞬間だった。

伊織くん、明日には彼女さん出来るんじゃ……。

なんだが、胸の中がモヤモヤして、息苦しくなった。

この先、同居上手くいくのかな。

まだ直接会っていないのに、私の中の不安が大きくなっていった。