スキナダケ

黒髪の目をジッと見つめたまま、ハナはポケットの中のスマホのスクリーンを適当にコツコツ叩いた。

見えないんだからしょうがない。
今がスマホの時代で良かったって思う。
適当にやってればいつか正解に辿り着くはずだから。

「ハナちゃーん、大人しくなっちゃって。もしかしてその気になった?良かったね。人を殺すよりずっと楽しいかもよ」

「何、この子、殺人やってんの?」

金髪がお姉さんの隣にあぐらをかいて座った。
呑気に見物しようとしてるその姿すら、ハナには愉快で堪らない。

「知らなーい。ほんとかどーかは分かんないけどさ、私もそういう約束で今日会うことになったんだし」

「へぇー。おもしれぇことやってんじゃん。俺らにも教えてよ、人の殺し方」

下品な笑い方のまま、金髪はポケットの中から小ぶりなバタフライナイフを取り出した。
愛おしそうに刃先を眺める金髪の目。
吹き出さないように歯を噛み締めるのが大変だった。

あのナイフ、きっと使ってない。
人を傷つけたことがあるのなら、あんなに新品みたいな刃先はありえない。

相当メンテナンスしてるんなら別だけど。