スキナダケ

「本当に何も無いね」

「うん」

実際、ハナの部屋に特徴的な物は何も無い。
少しの小説や漫画用のラック、衣類をしまうチェスト、勉強机、カーテンやラグ、寝具カバーなんかはブラウンやベージュで統一している。
全部無地。

アイドルのポスターや友達の写真も貼ったりしてないし、女子高生の夕海にとってはかなり殺風景だと思う。
唯一の場所を除いては。

「本当にこれだけ?」

「これだけって?」

「ハナちゃんの部屋の物。これがハナちゃんの全部?」

夕海はグルっと部屋を見渡してから、クローゼットのところで視線を止めた。
夕海は鼻が効くのかもしれない。
警察犬みたいだった。
それならハナに染み付いた沢山の血液のニオイもいつかバレちゃうかもなんて思った。

「開けてもいい?」

ハナは応えなかった。
夕海は最初からハナの返事なんて期待していなかったみたいに、当たり前みたいにクローゼットに近付いて、持ち手に手を掛けた。