スキナダケ

ハナはイチの最期の問いに答えなかった。
それを未だにふと思い出すことがある。

「ハナちゃんは何になりたいの?」

別に、本当に女の子になりたいとか、本当の自分が男であることが苦痛だとか思ってるわけじゃないと思う。
よく分かんない。

ハナは何者なのか。
何になりたいのか。
ハナがおかしいのか、みんながおかしいのか。

ハナにはよく分かんなかった。

人を殺したって、生の鎖から解放してあげたって、
ハナ自身が救われるわけじゃない。
なんにも変わらない。

ハナはハナのまま。
ずっとこのまま。
何にもなれずに、世の中からちょっとズレて生きていく。

それが苦しみなのかどうか、よく分からない。

男のままで綺麗だって特別だって持て囃されて悦に浸る。
少女の姿で賞賛されてチヤホヤされてまた悦に浸る。

みんながハナに夢中になる。
承認欲求を満たしてくれる。
ハナの裏の顔も知らないで。

そうやって、世間を見下ろすのが好きなだけかもしれない。