スキナダケ

どんなに死にたいなんて言ったって、現実に死を目の前にすればやっぱり辞めたいとか生きたいとか泣き出すかもしれないって、本当はちょっと思ってた。

そうなった時、ハナはそれでも本当に殺すだろうか。
同情して、辞めてあげるだろうか。

途中で辞めちゃった時、この関係はどうなるんだろう。
継続するのは面倒だし、でも一瞬でも「死」を分かち合った貴重な関係、無くなるのは惜しいかもな、なんて考えたりもした。

でもイチは全然泣いたりもしないし、やっぱり辞めてって懇願したりもしなかった。

ただ胸の谷間にそっと触れられたナイフの刃先に「冷たい」とだけ言った。

「生」に執着を失くした人。
「死」が救いになると、本気で信じている人。
その全てをハナに預けた人。

その瞬間のイチは綺麗だった。