スキナダケ

昇降式のリフトテーブルは手元にコントローラーがあって、思ったよりもシンプルで分かりやすい、と言っても、それは今のハナが昇降することしか必要としていないからだ。

リフトはゆっくり上へと上がっていく。
男性がロープをくくりつけてくれた高さまできたら、リフトを止めた。

「逆にさ、夕海が選んだのがお前で良かったのかもしんない」

「なんで…」

「ふつーに男らしくて強そうな奴だったら、たぶんハナが負けてたもん」

「君はどんな手でも使うだろ」

「使うよ。当たり前じゃん」

ズッ…っと奇妙な感触がハナの手の平に伝わる。
握ったナイフからボタッと血液が滴って、テーブルを赤く染めた。

ナイフを引き抜かれた脚は赤黒く、刃が刺さっていたのがどこか分からないくらい、全体が血まみれだった。

「ガッ………ァア………ッ」

「ねぇ、ずっと思ってたんだけどさ」

「…」

「あれからずーっと性器晒しっぱなしだけど恥ずかしくないの?」

「…」

「アハハハハハハハハハハハハごめーん!そんなこともうどうでもいいよね!いや、ごめんねほんと。急にくだんないことが頭よぎっちゃって。雰囲気ぶち壊しちゃってごめん。…なんにも言わないってことは、もういいってことだよね?やっと諦めついた?…じゃあさっさとヤッちゃうね」

開閉式の扉を開けた。
扉のギリギリに彼氏を追いやって座らせてから、ハナは柵に捕まって、手を伸ばしてロープを掴んだ。
結び目から輪っかまでは長めにしておいたから、十分余裕がある。

だけど地面に絶対足は付かない。
木の高さもちゃんと、お父さんが測ってくれていた。

もう一切の抵抗も示さなくなった彼氏の首にロープの輪っかを掛けた。
結び目をギュッと根元まで閉める。

「ァグッ…」

ロープを爪で引っ掻く。
強く閉めたロープは解けない。

抵抗しなくなったと思っても、目の前の死には抗いたいらしい。