スキナダケ

イチと手を繋いで工場兼、イチの元自宅に入った。

もちろん電気なんて通ってないし水道も通っていない。

ほとんどの家財道具は差し押さえられて持ち出されて、窓ガラスも割れていたり、自宅として使っていたとこの床や階段も老朽化が進んでいた。

数年間、誰も住んでいないだけで、家ってこんなにお化け屋敷みたいになるんだって思った。
これからリアルお化け屋敷になってしまうんだけど…。

「ここ」

イチが指差した部屋。
なんにも無かった。
本当に、なんにも。

「私が使ってた部屋」

「本当に何も無いんだね」

「お金になるかどうか分かんないけど取り敢えず売れそうな物は全部持っていかれるの」

「へぇ」

使いかけの文房具とか、古くなった漫画、汚い毛布なんかが散らかっているだけの部屋は、ここに人が住んでいたとは思えない景色だった。