「お父さん、行こう」

「あぁ」

「夕海、ちゃんとついてきてね。逃げたら夕海のことも苦しくしちゃうから」

夕海は抵抗しなかった。
先頭に立つお父さんの後ろに夕海、それをハナが後ろからついて階段を降りた。

玄関を出て、柵の前に車が停まっている。
見たことの無い黒のバンで、窓に目隠しシートが貼ってある。

外からは中の様子はあんまり見えない。

さっきの男性達が運転席と後部座席に分かれて座っている。
後部の荷室にはお父さんが言った通り彼氏が転がされていて、足もロープで縛られている。
口元を塞がれていないだけ親切だと思った。

お父さんが助手席に座った。
ハナと夕海は、夕海を真ん中にして後部座席に座った。

「静かにしててね」

荷室の彼氏に言ったら、コクンと小さく首を動かした。

ゆっくりと車が走り出す。
行き先はお父さんが所有するあの山。

ママを燃やして以来の山だった。