スキナダケ

「今は？どうやって生活してんの」

失礼かなって思ったけど、どうせ今日、イチは死ぬ。
どうでも良かった。

「パパは違う工場に勤めてる。借金はママの実家に頭下げて工面してもらったみたい。今はママもパートに出てる。あとはお姉ちゃんの将来に賭けてるって感じ」

「あー…」

「言ったでしょ。お姉ちゃんのこと。すごく優秀なの。あんまり無いはずのお金をお姉ちゃんにかけて、将来に投資してるの。だから私にかけるお金は無い。ただでさえお金が必要なのに、優秀じゃない私は家族にとって穀潰しでしかないんだよね。お姉ちゃんもなんにも言わない。あんたはいいよねって。プレッシャーも無くて、自由。自分みたいに将来まで家族に捧げる必要も無いし、たまたま勉強が出来たってだけで自分の人生はもう終わりだって…。悪いのは騙されたパパなのに」

「うん。そうだね」

「みんな、ちょっとずつおかしくなっちゃったの。ここがダメになった日から、ちょっとずつ。もう戻れない。だから家族がちゃんと家族だったこの場所で終わりにしたい」

「わかった」