スキナダケ

「何の香り?」

「何が?」

「手。甘い匂い」

「そうかな」

「何かつけてる?」

「なんにも」

絶対に嘘だって思った。
自然現象で人間からする香りじゃない。

でもそんなこと本当はどうだって良かったから、ハナはそれ以上何も言わなかった。

イチはきっと、特別になりたいんだ。
他の人間とは違う、特別な何かに。

だから人工的な香りも天然のふりをする。
自分だけが特別。
自分にだけ与えられた物。

そう思える材料はなんだって良かったんだろう。
香りでも、ハナの存在でも、なんでも。