スキナダケ

夕海は握っていたハナの手を離した。
心臓がドクンって鳴った。

「なんでそんなこと始めたの」

「…最初は興味本位。SNSで知り合った子と初めて会った時にその子が死にたがってたんだ。ハナになら殺されてもいいって。だから快速電車が滑り込んできた線路に突き落とした」

「人が見てるとこでやったの?」

「ほんの一瞬だったし。見てるようで誰も見てないんだよ。見てたとしても、誰もハナの証言を疑わなかった。急にバランスを崩して落ちちゃったんだ、って。みんなハナの言うことを信じた」

「なんで?そんなの調べればすぐに分かることじゃん!」

「そうだけど、でも実際誰もそうしなかった。ハナ、今よりもっと小さかったし華奢で、顔ももっと女の子っぽくて。それだけで正義だったんだよ。ハナは何をしても許される。そう思って、辞められなくなった。線路に突き落としただけじゃ人を殺したって実感もあんまり湧かなくて。自分の手で殺してみたくなった」

夕海が自分の手の平を見つめながら、ゆっくりとハナの顔に視線を移した。
怒ってるわけでも、怖がってるわけでもなさそうな表情だった。