小学四年生のさくらは真由美の後ろに恥ずかしそうに隠れていた。おかっぱ頭がよく似合う可愛い子だった。  

 僕が腰を下ろしてさくらをじっと見ると、さくらは突然、浜辺を走り出した。そして波打ち際でしゃがみ込み、何かを探し始めた。 

 さくらの側に行くと、泥団子のような丸い物体を渡された。触ってみるとぶにょぶにょしてて気持ち悪かった。これ、何?って聞くと、三日前に埋めた腐ったみかんだとさくらは答えた。
 目を見開くと、さくらはお腹を抱えて笑い出した。僕に腐ったみかんを掴ませて嬉しそうだった。
 あっかんべーと逃げ出したさくらを日が暮れるまで追いかけ回した。  

 さくらとの生活は驚きの連続だった。生卵とゆで卵を入れ替えたり、僕の靴にコンニャクを入れたり、僕の鞄に玩具の蛇を仕込んだりと、さくらにされた悪戯は数知れない。

 だから反撃した。

 さくらのランドセルにトカゲの玩具を入れたり、お弁当の玉子焼きをしょっぱいやつとすり替えたり、さくらのゲームのデータを消してやった。だが、それで大人しくなるさくらではなく、さくらは僕のパソコンのデータを消した。さくらにされて一番頭に来た事だったのに、今となっては笑える話だ。

 僕も大人げなかったし、さくらも可愛げがなかった。

 ――私と結婚して 

 昨日の言葉が過る。