雷鳴に閉じ込められて

「この木に昨晩、雷が落ちてしまったのでござる。雷が落ちると、このように焦げてしまうのでござるよ。拙者が落雷を制御できなかったせいで、こうなってしまったでござる」

「焦げて……」

ふと、萌黄の頭の中に三人の遺体が浮かぶ。三人の体は焦げていた。まるで、このきのように……。

(タケミカ様は雷の神、そして武神……。遺体が見つかる前は雷が轟く雨の日。まさか……)

一歩、萌黄は後ずさる。信じたくない。だが彼ならば、目撃者がいないのも、事件現場に手ががり一つ残されていないことも辻褄が合う。神の姿を見ることができるのは、ほんの一握りだからだ。

「……萌黄殿?ああ、気付いてしまったでござるか」

タケミカの優しい笑みが、甘ったるい煮詰めた砂糖のような笑みへと変わる。逃げ出そうとした萌黄の前にフツノミタマノツルギが飛び出して逃げ道を塞ぎ、萌黄はタケミカに背後から抱き締められてしまう。

「タケミカ様、離してください」

「嫌でござる。……ずっと、こうしていたかったのだから」