「あっ、小桃ちゃんだ!」


 保健室に向かって小走りをしていると、すれ違った人に急に声をかけられた。


 今、小桃って言ったよね…?


 声がした方を振り返ると、そこには2年生を表す青ネクタイをした男の先輩が立っていた。


 …榛名先輩といい、私よく先輩に声かけられるなぁ。


「…あの、どうかしたんですか?」


 少し怖かったが、勇気を出して聞いてみた。


「えっとね、俺、朔空と同じクラスの2年1組の桐生(きりゅう)大河(たいが)!君、椎名小桃ちゃんでしょ?」


 男の先輩…桐生先輩は、私のことを物珍しそうに見ながら言った。


 …なんで私のことを?


「…違います」


 急に声かけてくるし、知らない人だし。


 私はとぼけることにした。