…しっかり、寝れる?


 もしかして、先輩、今まで寝れてなかったの?


「ど、どうしたんですか」


 先輩がボソッと言った言葉が気になって、私はそのことを先輩に聞いた。


 すると先輩は、ゆっくりと自分のことについて話し始めた。


「…俺、幼稚園くらいの時に父さんを病気で亡くしててさ。で、その時に俺の母さんが俺を捨てて他の男のとこに行っちゃってさ」


 話す先輩の瞳からは、今にも雫が流れ出しそうだった。


「それから俺、夜とか眠れなくなっちゃったんだよね。母さんのこともあって、他人のことを信じられなくなって。…ははっ、こんなこと小桃に言っても困るよね。でも、小桃は俺にとっては救世主なんだ」
 

 先輩がゆっくりと顔を上げ、ベッドの脇に立つ私を見上げる。