「えー…いいじゃん」


「よくないです!…先輩もそろそろ行かなきゃ遅刻しますよ?」


 と、私は教室へ戻る準備をしながら、まだベッドの上にいる先輩に声をかけた。


「んー、俺はいいよ」


「いいって、なんでですか」


「俺、授業受けないから。…小桃、また一緒に寝ようね?」


 なんて上目使いで言ってくる先輩は、子犬のように可愛かった。


「寝ません!」


 私は先輩に流されないように大きな声で言った。


 …見た目はカッコいいのに、中身は可愛いって、どういうこと。


 ちょっとでも気を抜いたら、先輩のペースに持っていかれそうで怖い。


 私はすぐに準備を終わらせて、保健室を後にしようとしたその時。


「待ってるね」

 
 と、先輩が私の背中に呼びかけた。


 私はそれに返事もせずに、一目散に教室に走った。