夏休み初日。


とはいえ、その日から文化祭実行委員会の集まりはあって。






制服に着替えて学校に向かうので。普段の学校生活と何ら変わらない日々。






琴音は、久しぶりに家に帰ってきた洋子さんにお願いをしてきた。






こういうことがあると、やっぱり住み込みの利点だなと思ってしまう。









ちなみに島津くんとは同じ家から同じ場所に向かうわけだけど、時間をずらして登校するという凝りっぷり。









今日は島津くんが先に家を出たらしい。



起きたらもうすでにいなくて、どんだけ私と顔を合わせたくないか、やる気があるんだって話。






この二つのどちらかと言えば、それは間違いなく前者だろう。






……まぁ、私のせいなんだけど。











学校について、下駄箱から上靴を取り出す。






「……あれ? 誠ちゃん?」



「え?」






後ろから声をかけられて、ピクリと肩が揺れた。






真見さんと呼ばれることが多いこの学校でこの呼び方をするのは誰だ……?






とりあえず表情を取り繕い、笑顔で振り返った。








「はい、真見誠です」



「っ、ふ……」






そこにいたのは、何故かお腹を抱えてぷるぷると震える茶髪。






「……っふふ、はーっ。俺相手にかしこまるなんて……っくふふ、腹痛ぇ……っ」




「……はぁ、こんにちは。鹿島先輩」








挨拶ついでにその頭をぺしんと叩く。






すると先輩は涙のまま上半身を起こして、咳ばらいを一つ。






「おはよう、真見さん。夏休みまで仕事があるなんて、大変だよね」



きらきらきらー


光り輝く王子様スマイル。






いつもとは違って制服もきちんと着ているし、ピアス等も外しているので、優等生に見えないこともない。






まぁ、内面を知っているから、見えるも何もないんだけど。