広くはない中庭はライトアップされていたりとか特別ムードがあったりするわけでもなかった。もしそうならカップル達の場所、または修学旅行カップル誕生の場になっていたかもしれない。空は曇っていたが晴れていたとしても田舎に来たわけではないから星がよく見えるわけでもないと思う。夜風が涼しくて快適だ。

ふと小橋さんが寄ってきてお菓子の袋を差し出してきたので『あ、ありがと。』と言ってひとつもらう。優しい甘さの丸いカステラだった。

笠野くんが席を立って室内に戻っていく。トイレなのか部屋に戻るのか。せっかく皆揃ったのにな、と少し寂しい気持ちになりそんな自分に驚く。

少しすると笠野くんが戻ってきてなんだかホッとする。彼は男子達の方には戻らずなぜか私の前まで来た。