室長はなにをする人ぞ

「わたし、玲美さんがうらやましいです」

お酒の力は借りていない。夜の空気と、月の光が言わせた言葉だろうか。

どうして、と促すような彼のまなざし。

「誠実に愛されて、そんな方と添い遂げられるって素敵なことだなって」

そうだな、と五嶋さんが静かにつぶやく。
「だから俺も、実際に会ってみたくなったんだ。泉さんご夫妻に」

五嶋さんも、同じような想いを———

気づけば私たちは、互いの手を求め、しっかり結び合っていた。

早川美緒さん。と彼がささやく。
初めてわたしの名を呼んでくれた。彼を見上げる。

「連絡先を訊いていいかな? 今度一緒に行きたいお店があるんだ」

返事に迷いなんかない。
「よろこんで」

始まる。想いあふれ出す。
彼と歩く、その先へ———



【完】