室長はなにをする人ぞ

五嶋さんの言葉どおり、出てくるものはどれも舌に馴染む美味しさだった。
皿もお椀も、よく使いこまれていて、料理に味を添えている。

五嶋さんとわたしは、よく喋りときに笑い声もあげた。
彼に教えてもらった『sway』がすっかり気に入って、よく聴いていると話すと、照れくさそうな笑顔を見せてくれた。
それだけで、わたしは胸がいっぱいになってしまう。

いつまでもこの時間が続けばいいと思ってしまうけど、食事は終わりに近づいてゆく。
お酒が入っていないから、さくさくと箸が進んでしまうのが残念なくらいだった。

腕ものの後お茶を飲んで、わたしたちは席を立った。

明日も仕事だからと自分に言い聞かせる。
そして明日も会社で五嶋さんに会えるのだ。もちろん明後日も。
そのことが、まるで奇跡のように感じられた。

駅までの道を、二人でゆるゆると歩く。

夜の住宅街は、人気(ひとけ)なくしんとしている。