室長はなにをする人ぞ

「あとは単純に、この数字をアルファベット26文字に当てはめてみるだけでした」
五嶋さんが言いながら、R59-139の下にアルファベットを記していく。

「つまり、5はA、B、C順の五番目のアルファベット、E。9は同じ要領で I になります。
139は少しひねって、13と9に分割して数えました。13はM、9はもう一度 I がきます。つなげて読むと———」

R・E・I・M・I…玲美だ。

まあ、と玲美さんが小さく声をあげたきり、言葉を失う。
あっけに取られたような表情だった。

「当時の日塗工の最新版がR版だったことから、ご主人が思いつかれたのか。それとも最初からご自宅の色のどこかに奥様の名前を忍ばせたかったのか。それは今となっては分かりませんが。
これが、ご主人がR59-139を奥様の色と言っていた意味ではないかと」

「間違いないと、思います」
玲美さんの目は、五嶋さんのノートの文字を見つめ続けている。