美しく上品な女性を連想させる名だ。

ひょっとして、と五嶋さんがペンを持ち上げた。目が鋭く光っている。

なにか閃いたようだ。
勢いよく、ノートにペンを走らせる。ページに細切れに文字と数字が並んでいく。

「そうか、そういうことか」
やああって、ペンを放り出すと、デスクチェアに背をあずけた。

「分かったんですか、五嶋さん」
答えが知りたくて、デスクチェアごと彼ににじり寄ってしまう。

早川さん、と五嶋さんはどこか気の抜けた口調で、こちらに視線を振り向けた。

はい、と反射的に答える。

「泉邸を訪れてみないか」

話の流れが見えなくて「なんでですか?」とぽかんとしてしまう。

会ってみたくなったんだ、と五嶋さんは遠いものを見る目をしている。
「これだけ愛された女性に」