あなたの魔法にかけられて、ただあなたの腕のなかで…そんな意味のようだ。

「どこかラテンの夜を思わせる」
と五嶋さんが言い添える。

彼のささやきが、わたしに魔法をかけてしまう。
彼は年上で、わたしよりずっと大人で、全てを持っていてなんでも出来てしまう。
わたしが好きになってしまったのは、そんな人なのだ。

飲み終えて空になったプラスチックカップを、サブバッグに入れて大事に持ち帰った。
きれいに洗って水切りカゴにふせる。五嶋さんが初めてご馳走してくれたものだと思うと、カップももったいなくて捨てられない。

スマホでジョイス・モレーノを検索して『Sway』をダウンロードしてしまった。

自分でも思うけど———相当重症だ。

五嶋さんとわたしじゃ、とうてい釣り合わない。
そう思うと、たまらなく切ないけれど。
好きな人と同じ空間で一緒に働けるだけで、幸運なのかもしれない。

それに相手はわたしを(仕事でだけど)必要としてくれているのだ。

どうしようもなく揺れる(sway)気持ちを抱えて、眠りについた。