たいしたことじゃないんですけど、と前置きして。
「子どもの頃住んでいた家の近くに、不思議な建物があったんです」
この仕事をするようになって、ふと蘇ってきた記憶だった。
「古いビルだったんですけど、そこの二階か三階くらいの壁に、ドアが付いてたんです」
ほう、と五嶋さんが口のなかでもらす。
「開いているところは見たことがないんですけど、ペイントとかじゃなくて、確かに本物のドアでした。そこを通るたびに友達と『なんのドアだろうね』って話してて。
子どもだったから『あそこから出ると、空を飛べるのかな』なんて突飛な想像までしてたんです」
今思い返しても、やはり不思議だ。外階段もない壁にドアだけあるのだから。
「空が飛べるドアは面白いね」
五嶋さんが笑むのを見るのが、わたしは好きだ。
「五嶋さんもそんな建物見たことありますか?」
事例としてなら、とあっさり返ってきた。
「えっ、あるんですか!?」
やっぱりこの人に知らないことはないんだろうか。
「高所ドアは珍しいけど、ないわけじゃない」
と説明してくれた。
「子どもの頃住んでいた家の近くに、不思議な建物があったんです」
この仕事をするようになって、ふと蘇ってきた記憶だった。
「古いビルだったんですけど、そこの二階か三階くらいの壁に、ドアが付いてたんです」
ほう、と五嶋さんが口のなかでもらす。
「開いているところは見たことがないんですけど、ペイントとかじゃなくて、確かに本物のドアでした。そこを通るたびに友達と『なんのドアだろうね』って話してて。
子どもだったから『あそこから出ると、空を飛べるのかな』なんて突飛な想像までしてたんです」
今思い返しても、やはり不思議だ。外階段もない壁にドアだけあるのだから。
「空が飛べるドアは面白いね」
五嶋さんが笑むのを見るのが、わたしは好きだ。
「五嶋さんもそんな建物見たことありますか?」
事例としてなら、とあっさり返ってきた。
「えっ、あるんですか!?」
やっぱりこの人に知らないことはないんだろうか。
「高所ドアは珍しいけど、ないわけじゃない」
と説明してくれた。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)