室長はなにをする人ぞ

「在庫があるかW社に聞いてみます」
わたしはパソコンでW社の電話番号を検索して、受話器を取り上げた。

数分後。
電話を終えて、はずんだ声で報告する。
「旧品は残念ながら販売終了ですけど、ほぼ同じデザインの後継品がありました。在庫もあるそうです」

「よし、営業の牧田くんに連絡してやってくれ」
五嶋さんの唇の端が満足げに上がる。

彼が笑むと、頬からあごにかけてスッと線が走る。
それは皺と呼ぶのかもしれないけれど、五嶋さんだと、むしろ表情に深みが増すから不思議だ。

たとえるならクリント・イーストウッドのような、といったら大げさだろうか。

ほどなくして、牧田さんから礼の電話がかかってきた。
———先方の奥様に、めっちゃ喜ばれましたよ。『さすが四商さん、アフターメンテもしっかりしてる』って。

誰かの役に立っている、喜んでもらえていると実感すると、シンプルに嬉しい。
費やした時間も労力も報われるというものだ。

隣で鷹揚に微笑む五嶋さんとふと、一緒に祝杯をあげたいな、なんて思って、そんな自分に驚いた。