「阿久津様、準備整いました。その男も連れていきますか?」

近くに止まっていたヘリから降りてきた男がそう言うと、匡は頷き他にも司令を出す。そして未だ動けずにいる俺に近づくと、手にしていた銃を雑に投げた。


「持ってけ。それがあればとりあえず生き延びれるだろ」


胸に当たり、側に転がった銃には本郷家の家紋が刻まれている。聞きたいことは山ほどあるが、これ以上追求することは止そうと思った。


「天沢と繋がっていたのになぜ生かすんだ。俺は本郷の敵なんだぞ」


去ろうとしていた匡に投げかけた。


「あの人にはまだお前が必要だと思ったから。それだけだ」


それだけ言い残すとヤツはマフィアの男を担ぎ、待機していたヘリに乗り込んでしまった。


ヘリのプロペラが大風を作り出し、煽られる。


リリィ……俺もお前の味方だ。たとえ周りが否定したとしても。



俺は日本へと帰るべく、立ち上がるために力を振り絞った。