叶わぬ恋ほど忘れ難い


 と。ここまで二人とも、一瞬の空白もなく話し続けていたけれど、突然店長が言葉を切り、穏やかな表情でじっとこちらを見つめてくるから。
 わたしも何も言えなくなって、ただ視線を合わせた。

「きみは、良い妻で、良い母親になると思うよ」

 でも彼の口から紡がれた言葉は、嬉しいものではなかった。

 今の時点では、結婚は考えられない。心に本気の恋を抱えたままでは、夫も子どもも不幸にするだけだ。
 だからどれだけ理想を並べても、全て無意味なのだ。

 それを悟られないよう、当たり障りのない言葉を探していたら、のしのしという足音が近付いて来た。

 すぐに森のくまさん――もとい武田さんがスタッフルームに入って来た。大きなコンビニ袋をぶら下げて。

 罰ゲームという那のお使いから帰還した先輩を労いながら、内心ほっとしていた。
 当たり障りのない言葉を吐きながら、笑える自信がなかったのだ。あれほどまでに楽しい会話ができる人と、わたしは、夫婦になることができないから。
 きっと不満の表情をしてしまうだろう。だって実際、不満しかないのだから。

 武田さんが買って来てくれたおにぎりやサンドウィッチ、飲み物やお菓子を長机に並べながら、ちらと店長を見遣ると、彼は穏やかな表情のままデスクに頬杖をついて、天井を見つめていた。