僕が寝室に行くと彼女は先に眠ってしまったようだ。

もしかすると眠っていなかったのかもしれない。

いずれにせよ彼女はベッドで静かに横たわっていた。

僕は隣に横たわると静かに目を閉じ、今までの女の子のことを考えた。


気がつくと彼女は僕の上に乗っかり、ゆっくりと体を動かしていた。

僕の手を強く握るとそのまま僕の上に体を倒した。

彼女は僕の耳に何度も温かい吐息をした。

僕の上から体を下ろすと僕の肩に顔を寄せた。

「あなたは女心を何もわかっていない」

そうかもしれない。

僕はそう言ったまま天井を見上げていた。

彼女は同じ言葉を何度も繰り返していた。

僕は目をつむり一体何をわかっていないのか考えていた。


目が覚めると彼女はリビングで朝食を作っていた。

僕は体験したことは夢か現実かわからなかったが、彼女に確かめるのはやめておいた。

僕は起き上がるとリビングに向かい水を一杯飲んだ。

「おはよう」

彼女はそう言うとフライパンの上のウィンナーにブラックペッパーを振りかけた。

おはよう。

僕はソファに深く座り煙草に火をつけた。

外は天気もよく蝉が元気に鳴いていた。

「今日は帰りが遅くなるわ。夕食はどうする?」

「何か適当に作って食べるよ」

簡単なものでよければ作っておくけどと言われたが断った。

僕だって全く料理ができないわけじゃない。

彼女はテーブルにウィンナー、目玉焼き、ごはん、味噌汁を並べた。

ありがとう、いただきます。

今更ながらご飯を作ってくれる彼女は優しいと感じた。

彼女は支度をすると先に家を出た。

行ってきます。

いってらっしゃい。

彼女は化粧品会社で受付をしている。

僕が言うのもなんだが彼女は街中ですれ違うと何人かの男性が振り返るくらい可愛かった。