彼女は僕の方を見つめたまま無言になった。

やれやれと下を向くと首を横に振った。

こういった光景を僕は何度と見てきた。

きっと僕に何か問題があるのだろう。

しかし僕はこの歳になっても理解できずにいた。

彼女は立ち上がり冷蔵庫から缶ビールを2本取り出した。

しばらく2人でテレビを眺めていた。

強盗事件や殺人事件、国会で決まった議論の結果など。

ほとんど耳に入ってこなかった。

缶ビールを飲み終えシャワーを浴びた。

しばらく顔にシャワーを浴びながら彼女のことを考えていた。

考えたところでやはり僕には何もわからなかった。

リビングに戻ると彼女は先に寝室に行ったようだ。

冷蔵庫から缶ビールを取り出しソファに腰をかけた。

何か音楽を流そうと思ったがそんな気分でもなかったのでラジオをつけた。

ラジオパーソナリティがリスナーの質問に答えている最中だった。

好きな男の子がいるが自信を持てず告白できない。

どうすればいいだろうか?

そういった類の質問だったと思う。

「私も昔高校生の頃に好きだった先輩に告白をしたけど断られたことがあるの。その時はショックだったけど後から思えば自分の気持ちを素直に伝えることができてよかったわ。だからあなたも自分の気持ちを素直に伝えてみるのもいいかもしれないわ」

彼女はそう言うと次の質問を読み始めた。

「続いての質問です。東京都杉並区にお住まい、25歳、女性リスナーからの質問です」

僕は子供の頃、杉並区に住んでいた。

そして僕も25歳だ。

「部屋の掃除をしていたところ中学生の頃に付き合っていた彼氏からもらったCDが出てきました。久しぶりに聞いてみると当時の思い出が蘇り懐かしい気持ちになりました。友人になんとなく今彼がどうしているかを聞いてみましたが誰も知りません」

僕も友達は少ない方なので彼と一緒だ。