速人は抱きしめた手を緩めて私を正面にむけてつぶやく。
「でも、美玲は俺の誘いに乗ってきた。
少しは見込みあるんじゃないかって期待したんだけど…。

なあ、好きな奴でもいるのか?」

「え、えっとぉ…ごめん。」

わたしはどう答えたらいいかわからず頭を下げる。

「そ、そうだよな。
美玲と離れて10年くらいたつもんな…

好きな奴くらいいるよな。」

悪い、困らせてという速人の優しい気遣いが心苦しい。