志摩 出雲くん、中学三年生。

 茶色の猫っ毛に、切れ長のスマートな眼差しを持つ彼は私の幼馴染だ。

 ただ、数年会っていなかっただけ。

 幼い頃は、数軒隣のかなり近所に住んでいた。

 学年は違ったけど幼稚園から一緒。

 小学校も、私が三年生の頃まで一緒だった。

 でも出雲くんが四年生のとき、ご両親の都合で引っ越すことになったのだ。

 それ以来ほとんど会っていなかった。

 子どもの頃の私は、出雲くんが大好きだったから、当時はとても寂しくて毎晩のように泣いていた。

 それでも出雲くんが「また絶対会えるからさ」と頭をなでてくれたことで、多分確信していた。

 いつか、必ず会える。

 そう、小学生じゃ無理だけど、もっと大きくなったら、また一緒にいられる時間はきっと増える。

 そう信じていたけれど。

 叶ったかは微妙だった。

 出雲くんが引っ越したのはそう遠くじゃなかったから、中学生になれば自分で会いに行けると思った。

 けれど私のほうが忙しくなってしまったのだ。

 趣味のピアノを本格的に取り組むようになっていた。

 ピアニストなんてなれるかわからないけれど、少なくとも、なりたい気持ちはあるし、学校の合唱では毎回伴奏をやっているくらいには腕もある。

 ピアノを置いた部屋も、防音にしてもらって頑張っているのだ。

 ただ、レッスンはそのために忙しかった。

 教室は遠くないけれど、土日にもどっちかはレッスンに行くことになっていて、そのために遊びに行ける機会もそんなに多く取れない。

 中学生になれば出雲くんと会えるだろうと思っていたから、その点はだいぶ残念だった。