大いに動揺してしまった帰り道。

 いや、昼休みからずっと動揺していた気がするけれど、一連のこの出来事の意味がやっとわかったのは、帰宅後だった。

「羽奈、これ、もらってくれよ」

 私の部屋のソファに落ち着いて、出雲くんはさっきの紙袋から取り出した箱を、私に差し出してきた。

 そういうことだろうとなんとなく感じていたけれど、実際に直面してしまえば、胸がとても熱くなった。

 アクセサリーを贈られるなんて初めてだ。

「い、いいの?」

 つい聞いてしまったけれど、出雲くんは当たり前のようにうなずく。

「当たり前だろ。お礼なんだから、もらってくれないと困る」

「お礼?」

 なかなか手が出ない私にじれたようで、出雲くんは自分でリボンをほどいて、箱を開けてしまった。

 ふたを開けた箱を再び、すっと差し出してくる。

 その仕草はまるで指輪を渡すプロポーズのようで、私はどきんとしてしまったけれど、中に入っていたのは指輪ではなかった。

 ネックレスだ。

 ピンクゴールドで、鍵の形をしていて、ピンク色の石がはまっている。

 かわいらしい以上に大人っぽいものだった。

「ああ。BGMとかたくさん頼んじゃったお礼」

 そう言われて、私はやっと理解した。

 あのときのお礼と言われれば、自然だった。

 これほど素敵なものに恐縮(きょうしゅく)する気持ちはあるけれど、私の気持ちは前向きになる。

「そっか。ありがとう。とても綺麗!」

 そっと手を出して箱を受け取った。