「えー! 嘘でしょ!? 志摩くん、彼女とか嘘だよね!?」

 今度、声を上げたのは、近くの女子たち数人だった。

 ショックだ、という様子で出雲くんに聞いている。

「嘘なもんか。ちょうどいいから公表しようと思ってたんだ。こいつ、俺の彼女」

 出雲くんはにこっと笑って、私の肩をしっかり抱いて、言い切った。

 声にならない悲鳴のようなものが聞こえた……ような気がする。

 それに言葉通り、公表されてしまって、彼女とはっきり言われてしまって……。

 私の頭はもう煮え立ちそうだったのに。

「だからこいつのこと、いじめんなよ」

 出雲くんは、まるで牽制(けんせい)のように言った。

 ぐっと私の肩を抱く手に力がこもる。

 もう一度、悲鳴のような空気が伝わってくる。

 なのに出雲くんはそれにはまったく構わず、私のほうを見てにこっと笑った。

「な、羽奈。今日、迎えに行くから」

「…………うん」

 一緒に帰るのは決定らしい。

 私はぼうぜんとしながら、なんとか頷いた。

 一体どうしてこんな展開に。

 混乱のまま、出雲くんにノートを渡して教室を出て、二年生の階へ戻ったのだけど、昼休みも午後も、どこかふわふわしてしまった。