さらに……。

 ごそっと音がした。

 腕に力を込めて、もっと強く抱きしめられる。

 そのことで体がもっとくっついて、私は気付いた。

 出雲くんの心臓も、ばくばく言っている。

 平然としているように聞こえたけれど、そんなことはなかったんだ。

 出雲くんのほうも緊張してたんだ……。

 そこでやっと私は知った。

「羽奈に怖いことがあるなら、俺が守ってやりたいんだ」

 その私を強く抱きしめて、出雲くんは静かに言った。

 ばくばく速い鼓動が伝わってくる状況でそう言われたら、嘘やからかいだなんて思うはずがない。

 心からそう言われているんだ。

 胸が、かぁっと熱くなる。

 今度は恥ずかしさもあったけれど嬉しさに熱くなっていく。

「……ありがとう」

 よって小さな声になってしまったけれど言えた。

 もそっと動く。

 ただ、うしろへ行くのではない。

 前へ少しだけ動いて、自分からも出雲くんにくっつくようにした。

 出雲くんは驚いたようだった。

 そんな感覚が伝わってくる。

 でもきっと私の気持ちは伝わってくれただろう。

 本当に嬉しいと思う。

 こうして一緒にいてくれることも。

 守ってくれると言われたことも。

 それをお礼だけではなく、態度でも伝えたい。

 そういう気持ちだったけれど、数秒沈黙のあと、出雲くんが言った。

「お前の一番近くにいるのは俺だけがいい。こういうときも、普段からも」

「……うん」

 もうわかっていた。

 なにを言われるのかも、それから、このあとのことすらも。

 すごく緊張するし、心臓はばくばくするし、顔も胸もとても熱いけれど、私の答える声は意外にも落ち着いていた。

「羽奈が好きだ。彼女になってほしい」

 小さな声だった。

 なのに私の耳にははっきり届いた。

 これほど密着しているからだ。

 それだけではなく、出雲くんが『私だけに伝えたい』と思ってくれているからだ。