それに香りだけではない。

 あたたかい。

 体が近いから体温が感じられるのだ。

 刺激が強すぎて、くらっと意識が揺れたのに、香りと体温では済まなかった。

 さらに、ぐいっと抱き寄せられて今度ははっきりと、出雲くんのあたたかくてしっかりした体の存在感を、私の体で感じてしまったのだから。

 つまり胸に抱き込まれてしまったわけだ。

 どくん、どくんと心臓がうるさい。

 うるさいどころではなく、鼓動は速すぎて頭の上まで響くようだった。

 緊張で体もこわばってしまう。

 だってそうだろう、男の子と同じベッドで寝るなんて、初めてのことなのだから。

 それに、単に『男の子』なだけではない。

 相手が出雲くんだというのが一番大きい。

「ほら、こうしてれば落っこちないし、それに雷も聞こえないだろ」

 私をしっかり抱き込んでくれて、出雲くんはそう言った。

 雷。

 私はそこでやっと、この状況の理由を思い出した。

 私が『雷が怖い』なんて子どもっぽいことで不安になっていたからだ。

 それで落ち着けたり、眠れたりするようにしてくれたのだ。

「う、うん、そうだね」

 な、なんだ、そっか。

 単に幼馴染が不安がってたから、心配してくれたんだ。

 出雲くんは優しいから……。