ふわふわの布団はいつも安心できる場所。

 ぬくぬく心地いいから、いつも私はすぐに寝付いてしまうのだけど、今夜ばかりはまったく眠れる気配がない。

 もはや雷などのせいではない。

 だって今ここで感じられるのは、干したて布団の香りだけではない。

 甘いような、柑橘系のいい香り。

 出雲くんが普段つけていると教えてくれた、コロンの香りがする。

「おい、なんで端っこ行くんだよ」

 私はベッドの端っこに思いっきり寄っていた。

 出雲くんは不満げに聞いてきたけれど、そうもなるだろう。

 だってこのベッドはシングルベッド。

 まだ中学生の私には少々大きめだと思っていたのに、今は狭い。

 出雲くんと二人で一緒に入っているのだから。

「い、いや、だって」

 もにょもにょ言った。

 あんまり真ん中へ行くと接近してしまう。

 それはだいぶ緊張してしまう。

 どきどきでは済まなくなりそうだ。

 煮え切らない返事をしたのを不満に思ったようで、出雲くんは小さく息をついて、そして次の瞬間、私の体は意思とは関係なく動いていた。

「ほら、落ちるだろ」

 ぐいっと引き寄せられ……いや、抱き寄せられた。

 私の体はベッドの真ん中へ寄せられてしまう。

 爽やかな香りがもっと濃くなった。