なんだろう、と思った私だったけれど、そのときまた外から不穏な音がした。

 ゴロゴロ……。

 ああ、また落っこちてくる!

 耳をふさぎたくなったけれど、私の手は耳をふさぐのではなく、あたたかなものに包まれていた。

 どきっとした。

 さっき頬に感じた感触と温度だ。

 視線を上げると、出雲くんが私の手を取ったところで。

 かっと胸と顔が熱くなった。

 なんだろう、今日の出雲くんはちょっと違う。

 そう感じてしまう。

 でもさっきのようにはならなかった。

「下、行こうぜ。そろそろ夕飯の支度も手伝う頃だろうし、誰かといて、動いてれば気にならないからさ」

 にこっと笑った顔も、言われた内容も、実に普通だった。

「……うん?」

 私は内心、首をかしげてしまって、実際声には疑問が出たけれど、出雲くんは普通の態度を変えなかった。

「さー、今日はなにかな。おばさんのご飯、うまいから楽しみだ」

 手をぐいっと引かれて、私は出雲くんによって立つ形にされた。

「……うん」

 さっき言われかけたことも、今、こうして手を取られていることも、全部不思議だったけれどなんとか答えた。

 もう話題は夕食へ行ってしまったようだから。

 それに、家族でいれば雷もそんなに気にならないだろう。

 そう思ったから、私はおとなしく出雲くんについて外へ出て、階段を降りた。

 階下のキッチンに行くとお母さんが忙しそうに動いていた。

 私たちを見てにこっと笑う。

「ああ、そろそろ呼ぼうと思ってたの。手伝ってくれる?」

「はい。今日はなんすか?」

 出雲くんは軽くうなずいて中へ入っていく。私も続いた。

「ハンバーグよ。うまく焼けたと思うの」

 お母さんは笑顔でそう言った。

 確かにお肉が焼けていくいいにおいがする。

 私の気持ちもすぐに、夕ご飯へ移っていった。

 でもそのときにはもうすでに、取られた手が離されていたことを、なんだかちょっとすかすかしたように感じてしまった。